疲れた青年と路上の少女

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 人混みは好きじゃない。  普段、通勤する際には駅を出て真っ直ぐ続く、小さな公園の脇道を利用する。  そこなら駅への近道にもなるし、なにより静かで心地良い。  しかし深い闇の中、どうしようもない不満を抱えた俺は、いつものルートを利用せずにわざと遠回りをして駅に向かった。  いつもは決して通らない道は、案の定、人がうじゃうじゃ居て歩き難い。  それが更に神経を逆撫でする。 「…………チッ」  少々悪態をついてから、また歩みを進める。  遠くの方から音楽の様な物が聴こえた気がした。
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