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歌が終わると、彼女は俺に気付いてニッコリと笑う。
笑顔が似合う子だ、と思った。
「聴いてくれて、ありがとう」
歌っているときと変わらぬ声で、彼女は話し掛けてきた。
「お兄さん、なんて名前ですか? あ、あたしはアカリって言います! 年は十九歳、フリーター、夢はシンガーソングライター!」
――知りもしない男に、ぺらぺらとよく話す子だなあ。
ボーっとそんな事を考えていると、彼女……アカリが急かしてくる。
「……で、お兄さんは?」
「え……? あ、あぁ。大塚俊司、二十五歳。広告代理店勤務……だった」
また、嫌なことを思い出してしまった。
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