疲れた青年と路上の少女

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「あたしね、素敵なボーカリストになって、あたしの歌を世界中に届けたいの! あたしの歌で誰かが泣いたり、笑ったり、怒ったりしたら、あたしはすごく嬉しいんだ!」 「っはは、怒ってるのが嬉しいの?」  アカリの言葉に、思わず吹き出す。 「もちろん! だってそれって、あたしがその人の感情を動かしたって事でしょう? そんな奇跡起こせたら、嬉しいに決まってる!」  アカリがあんまり純粋に笑うものだから、俺は急に恥ずかしくなった。  社会に絶望しただの何だの言って、カンシャク起こして会社を辞めた。まるでガキだ。  それなのにアカリはただひたすらに夢を追い、純粋に歌っている。  俺には、眩しすぎるんだ。
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