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という言葉を残して火の宮へと戻っていった。
今夜…。
「あいつ…!」
舌を打つ思いで片手に顔を埋めると、困ったように笑うルークが袖を引いた。
「一応断ってみるよ、ファラがいるから無理は言わないと思う」
行こう、と促され、再び北門へと足を向ける。
この表神殿は、王国を北まで突き抜ける、1本の川の真上に建てられている。
南門の先は王城まで真っ直ぐ続く大通りになっていて、真下には川の流れが見える、格子道路でできている。
対して北門のすぐ外は、南の大通りと同じく川の流れが見える格子の路面だが、楕円形の広場が設けられ、そこから、北東、北西、東、西の四方に向けて、橋がかけられており、その先に民家や店が並んでいる。
そのうち、一行は北東へ進路を取り、神殿騎士の1人は先に道の確認に走り、残る4人が前後に分かれ、ルークの側にはシィンが残った。
司祭服を着たルークと騎士服を着たシィンの2人連れだ。
嫌でも素性は知れようというものだが、みな無理に話しかけたりも、大仰にひれ伏したりもしない。
王が気軽に街を歩ける。
この国はそうした王国なのだった。
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