王都の夜

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       ―Ⅱ―    少年の名はカィン・ロルトという。 茶髪碧眼は、様々な色彩をその身に宿すこの大陸の人々にとって、最も目にする色合いと言える。 そしてその色は、彼らが扱える自然界の力を示してもいる。 茶は土を、碧は水と風を扱える。 もちろん個人によって力の強弱はあるが、この国で特に出現の多い彩石(さいしゃく)と呼ばれる石によって制御、すなわち増大や減少を行うことができる。 増大を行える石をサイゴク。 減少を行える石をサイジャクと呼ぶ。 石自体が力を持つ場合はサイセキと呼び、例えば結界構築に使われている黒土石(こくどせき)などがこれにあたる。 カィンは朝一番で、口に残る昨夜の酒の匂いを洗い流した。 まだ酒の影響はあるが、今日は非番だし、昨日の彼…白剱騎士たるルゥシィン・ヴィーレンツァリオ卿の依頼は、夜になってからのことだ。 ある人物を捕らえ、奪われたものを取り返すため、手を貸して欲しいと言われた。 その人物は、と聞くと、言葉を濁したが、数拍置いて、今、大陸中を騒がせている怪盗のことだ、と話してくれた。 疑問が、湧く。 「えっ、それって律法部のやることじゃあ…」 律法部とは犯罪者専門の捕縛組織だ。 騎士出身の者もいるが、基本的に王室から独立した組織で、運用資金は構成貴族と、ある最大出資者から出ていて、その人物は完全に伏せられている。 ひとつだけ確かなことは、王室だけが一切資金援助していない事を公言していることだ。 彼らが掲げるのは単純な禁止事項4つだけ 殺してはならない 侵してはならない 盗んではならない 偽ってはならない 「内密に取り返して欲しいということだからな…」 やや横を向き、なんとも言えない顔をしていたのが気になる。 「でも俺なんかより律法部の方々が口も固いし手段も持ってるんじゃ…」 「それはいい。君に内容を知らせることはしないし、ただ奴を捕まえるとき退路を断って欲しいだけだから」 「ってことは犯人の目星というか居場所?とか判ってるんですか?」 「それは明日の夜探す」 「………」 何となく行き当たりばったりな気配を感じる。 「ははあ、出たとこ勝負ですか」 「近い」 いやそのままだろう、と思ったが口には出さなかった。 「では明日、よろしく頼む。謝礼は本人に出させるから、まあ小遣い稼ぎだとでも思ってくれ」 「えっ、要りませんよ?」
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