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―Ⅲ―
陽が落ちて、夕食を終えたカィンは、約束の時間に自宅に続く路地…昨夜シィンと遇った路地で彼と待ち合わせていた。
「…そういえば昨日聞き忘れたんですけど、お仲間の…騎士団員の方々にも内緒なんですか?」
するとシィンは軽く肩を竦めて、言った。
「彩石は4人しかいない。実質は3人で2人を守っているからな。外せなかった」
なるほどと思う。
彩石騎士は特に力の強い騎士が選ばれる。
双王の異能が及ぼす役割を支えるための存在だからだ。
守護や攻戦の肩代わりを務める力量がなければ役には立たない。
兵をまとめる力は元帥が肩代わりできる。
民をまとめる力は宰相が肩代わりできる。
そうやって、この国は双王制を支えているのだ。
もっと言えば、自分たちの仕事も、上の者を支えるためにあり、上の者は下の者を支えるために存在しているのだ。
養父と共に、大陸中を旅してきたカィンは、母国であるこの国の希少性を好ましく思っていた。
こんなにも役割をはっきり区別しているのだ。
互いの信頼関係がなければ、絶対に成り立たない。
「ところで今日はどうするんです?」
聞くと、シィンは表神殿に向かいつつ答えた。
「聞いたことを考え併せた結果、奴の行動時間は深夜0時過ぎらしい。その頃に備えて…見張る」
単純だが、相手が動くのなら効果はあるだろう。
ただし人数がそれなりにいればの話だ。
「あのぅ、2人でですか?」
「問題ない、王都全域の屋外を探れる」
ひぃ、と心のなかでカィンは悲鳴を上げた。
さすが彩石騎士、扱う能力の規模が違う。
騎士が剣に埋めて使う程度のサイゴクを使っても、探れるのは神殿の南門から王城までの直線距離程度、見えない場所があればさらに範囲は狭まる。
果たしてこんな人に援護が必要なのだろうか?
いじけかけたがそんな場合ではないと思い直す。
今夜もシィンは頭巾を頭から被っている。
何があるか判らないので、自分も頭巾付きの外套にしてあった。
夜も万人に開かれる南門は、形だけ閉まっているが、鍵は開いている。
昼間とは違う衛士が訪問者に軽く会釈し、こんばんは、と声をかけてくる。
つられてこちらも慌てて返すが、昼間は無言で通されたはずだ。
「夜だけ挨拶するんですかね?」
聞くともなし声に出すと、すんなりと答えが返る。
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