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驚いてシィンをまじまじと見た。
「俺、土の力はありませんよ」
髪こそ茶色だが、水と風の力しか起こせない。
「あまり知られていないが、サイセキには能力を断つ力のある石がある」
背は尖塔に預けたまま、シィンは腕を組んだ。
眼差しは遠く、夜景を見てはいない。
「土の力は元々発現しにくい。茶髪や黒髪は少なくないが、その力の多くは瞳の色に現れることが多い。そしてひとたび土の者が見付かると、その力は膨大な場合が多い」
カィンには実感が湧かない。
「こんな小さな石でどれだけのことが?」
「大きさは問題じゃない。力の密度の問題だ」
そうして力の密度を評価し、使った結果が、今回のサキト港での事件だ。
術中の石は基本的に動かせないのだが、あえて動かそうとするなら、大きいよりも小さな方がより容易くはなるのだ。
そして結局、動かされた原因は判らずじまいだった。
「それが形見の品なら、石の力を断絶して持たせることもできる。何にせよ、まずは君の実際の力量を量る必要がある」
了承してくれるか、とシィンがカィンを見て聞く。
個人の能力の把握は大陸のどの国でも必須の調査要項だ。
本人の身を守るためと、本人から他者を守るため。
特に生まれたばかりの子は、水簾の君のように、制御不能になりがちだ。
あまりないが、長じてから能力が発現した者もいる。
ちなみに水簾の君の騒動の際は、当時5歳だった姉である水の宮公が収めた。
「あのー、ところで土の宮公って怖いデスカ」
聞かれて、即座にシィンは首を横に振った。
怖じ気付かれたら面倒だ。
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