王都の夜

12/16
前へ
/170ページ
次へ
その時この数時間で聞き慣れた声がかかった。 しまった、と後悔しても遅い。 「ん?シィン、君の知り合いか?」 重い沈黙が降りる。 取り敢えず、シィンはカィンに謝った。 「カィン、すまない、しくじった。これのことは忘れてくれ」 「ああー、まあそれはともかくですね…どうせなら立ち話より飲みませんか」 ちょうどそこ飲み屋ですし、と路地奥の店を指す。 「いや、それは…」 「はっきり言ってその方が目立ちませんし、ローウェン卿の件、俺、提案できますよ」 思わぬ申し出にカィンを見、次いでジエナを見る。 ジエナも、カィンとシィンを見比べて、答えを出せないでいる。 そして迫る人の気配…。 「わかった、行こう」 シィンは覚悟を決めて、路地に入った。
/170ページ

最初のコメントを投稿しよう!

89人が本棚に入れています
本棚に追加