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双王
国王補佐兼王城警護主任とは与えられた役割で、名称としては彩石騎士筆頭、白剱騎士という。
代々受け継いできたこの騎士名の由来は、初代の髪色にあるらしい。
その後は服色からそれと知られるようになったため、今シィンが着ている騎士服も、彼自身の髪色に合わせたような白銀を基調にしている。
一般騎士の騎士服は黒みがかった灰色なので、太陽も高く上った昼前のこの時間、大通りを行き交う町の人々が気付いて隣の人に囁きかける。
私服でならここまで注目されないのだが、これから神殿に上がるので礼服は外せない。
人々の視線をいちいち気にしていては彩石騎士など務まらない、とは先の白剱騎士の言だ。
有事の際には国王の代理として動かねばならないのだから、見慣れてもらった方が都合がよい、とも。
歩きながら、いくつかの店の主と挨拶を交わす。
白剱騎士になってからは2年だが、12歳から近くに建つ士官学校の宿舎に入っており、その頃から付き合いがある者も多いのだ。
その愛想のなさにあって幅広い人脈を持つ彼の不思議は、黒檀塔の怪のひとつに数えられている。
さて、王都のほぼ中心部に位置する神殿まで、そう遠くはない。
神殿は、中央に白銀の尖塔を据え、四方を土の黒、風の緑、水の青、火の赤の建物に囲まれて、王城に真向う形で建っている。
王城から神殿までは直通の地下通路がのびているのだが、シィンは一旦黒檀塔に寄ったので町中を通ってきたのだ。
南門をくぐると、中央の尖塔に向かう。
神殿の門は万人に開かれているが、現在尖塔は要人が居るらしく、通常の衛士のほかに、神殿騎士が5人、今は閉ざされた扉の前に立っている。
顔見知りの彼らに軽く挨拶して、シィンは尖塔内部に入った。
天井中央から落ちる光が真下を照らし、そこにいた人物はその光を掬うように両腕を伸ばした。
「黒土に平穏、緑風に変化、青水に恵み、赤火に発達を求める」
暗みがかる闇色混じりの金の髪が光を受けて輝き、緑の瞳はその光彩を反射する。
「我、ルシェルト・クィン・レグナ」
その人物…少年はゆっくりと身を屈めた。
「この名をもってここに我らがアルシュファイド国の鎮守の楔を打つ」
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