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「サキト港でのこと、知ってるの?あれぐらいなんでもないよ」
「…それで何でその顔」
呟きにルークは笑みを深くする。
「だってシィンが心配してくれてるから」
意表を突かれて言葉に詰まっていると、続ける。
「それにアークに会えるならそっちのほうが気が安まるし嬉しい」
上げて落とされた気分だ。
「…妬けるな」
勘弁してくれ、と言えるなら言ったであろう人々が…5人。
別に誉れ高い白剱騎士と王国の守護者たる祭王陛下が同性にして恋仲だろうが文句はないのだが。
神殿騎士も、ほかの騎士と同じく禁じられてもいないのに、相手のいない自分たちの前で、仲良くしすぎというかなんと言うか…だ。
お願い誰か突っ込んで!という心の声が届いたのかどうか…。
そのときカツン、と硬い音が響いて、行く手を遮る者がいた。
闇色を含みながら輝く金の髪の奥に、強い意思を宿す青い瞳。
祭王ルークとは違う力で、この国をともに守る政王、アークシエラ・ローグ・レグナだ。
一行は立ち止まり、前衛の騎士たちが左右に退いて礼をとる。
その様子を意識するでもなく、彼女は、にやり、としか表現のしようのない笑みをつくって言い放った。
「当然よ!」
それから急に走りだし、そのままの勢いでルークに抱きついた。
「ひと月振りねルーク!元気そうで良かったわ」
ルークが、衝撃を和らげるためにアークともども一回転して、彼女を地面に下ろすと、改めて二人は抱き合う。
この時ばかりはシィンも彼らの邪魔はできない。何故ならルークがこの瞬間、最も幸福そうに見えるからだ。
「泊まりに来るって聞いたよ。忙しかったの?」
それを聞いて、ここは甘え所、とアークは力ない声で訴えた。
「そうなの、ユラ-カグナはガルバルよ!ひとつ終えようとすると次を出すの。食い付いて放さないのよ!」
ガルバルとは大陸北西部にある火山に棲む四つ足の火の獣だ。
容姿の恐ろしさもさることながら、一度獲物に食い付いたら放さない、また追い続ける執念深さが、大陸中の人々に例え話として広まるほど知られている。
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