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「お気遣い感謝いたします、ルーク様。でもわたくしも休みたかったんですの。言い訳ができて助かりましたわ」
よき友人の言葉に、ルークはほっとすると同時にアークを責めるような言葉を発したことを恥じた。
「そっか。余計な気を回したね」
ごめんね、とアークに呟くと、彼女はぎゅっとルークとファラの肩を抱き、言った。
「ううん、嬉しいっ」
大事な従兄と親友が、互いに思い遣りあっているのを見るのは、気持ちよく、嬉しいのだ。
その沸き立つ気持ちのまま、アークは名案を思い付いた。
「そうだっ、ファラとサリの4人で今夜は一緒の部屋で寝ようっ」
「ちょっと待て!」
間髪容れない声の主に、アークはあからさまな不機嫌顔を向ける。
「うっさいわね、女子夜会の邪魔すんじゃないわよ」
シィンの怒鳴り声が響く前に、ルークが急いで間に入った。
「アーク、僕らは血縁だけど、ファラは違うし、それに君ももう15歳だしっ」
途端にアークは両手を握りしめ、小首を傾げて瞳を潤ませた。
「ルークは私のこと嫌いになっちゃったの?」
なんだか態度が急激に変わったようなと思いつつ、ルークは慌てて首を横に振った。
「そんなことはありえないよ」
すっぱり言い切った瞬間、カラカラに乾いた瞳を輝かせて、アークが即座に言葉を連ねる。
「そーよね、なら問題ないわ、それより聞いてよ、あのオヤジども、隣のボルファルカルトルの第2王子と縁談組むとか言ってたのよ、頭きちゃうっ」
シィンが、問題なくはないと口を挟む暇もあればこそ、聞き捨てならない内容が続いたため、ルークは片眉を僅かに上げる。
「ボルファルカルトル?確かあそこの第2王子は…」
「そう!夫のある女性とばっかり噂の立ってるアレよっ。自国の女王にあてがうにはあんまりじゃないっ!?」
「それ以前に早過ぎない?」
ルークは隣に立つシィンを見上げた。
国王補佐の彼が知らないわけがない。
「そもそも僕はなんにも聞いてないけど。それともまさか僕には知る権利がないということなの?」
表情はあまり変わらない。
かわいいとも言える疑問に満ちた眼差しだが、誰に判らずともシィンには判る。
ルークが水面下で怒りをたぎらせつつあること。
背中で冷や汗を流しながら、シィンは平静を装った。
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