双王

5/8
前へ
/170ページ
次へ
「お気遣い感謝いたします、ルーク様。でもわたくしも休みたかったんですの。言い訳ができて助かりましたわ」 よき友人の言葉に、ルークはほっとすると同時にアークを責めるような言葉を発したことを恥じた。 「そっか。余計な気を回したね」 ごめんね、とアークに呟くと、彼女はぎゅっとルークとファラの肩を抱き、言った。 「ううん、嬉しいっ」 大事な従兄と親友が、互いに思い遣りあっているのを見るのは、気持ちよく、嬉しいのだ。 その沸き立つ気持ちのまま、アークは名案を思い付いた。 「そうだっ、ファラとサリの4人で今夜は一緒の部屋で寝ようっ」 「ちょっと待て!」 間髪容れない声の主に、アークはあからさまな不機嫌顔を向ける。 「うっさいわね、女子夜会の邪魔すんじゃないわよ」 シィンの怒鳴り声が響く前に、ルークが急いで間に入った。 「アーク、僕らは血縁だけど、ファラは違うし、それに君ももう15歳だしっ」 途端にアークは両手を握りしめ、小首を傾げて瞳を潤ませた。 「ルークは私のこと嫌いになっちゃったの?」 なんだか態度が急激に変わったようなと思いつつ、ルークは慌てて首を横に振った。 「そんなことはありえないよ」 すっぱり言い切った瞬間、カラカラに乾いた瞳を輝かせて、アークが即座に言葉を連ねる。 「そーよね、なら問題ないわ、それより聞いてよ、あのオヤジども、隣のボルファルカルトルの第2王子と縁談組むとか言ってたのよ、頭きちゃうっ」 シィンが、問題なくはないと口を挟む暇もあればこそ、聞き捨てならない内容が続いたため、ルークは片眉を(わず)かに上げる。 「ボルファルカルトル?確かあそこの第2王子は…」 「そう!夫のある女性とばっかり噂の立ってるアレよっ。自国の女王にあてがうにはあんまりじゃないっ!?」 「それ以前に早過ぎない?」 ルークは隣に立つシィンを見上げた。 国王補佐の彼が知らないわけがない。 「そもそも僕はなんにも聞いてないけど。それともまさか僕には知る権利がないということなの?」 表情はあまり変わらない。 かわいいとも言える疑問に満ちた眼差しだが、誰に判らずともシィンには判る。 ルークが水面下で怒りをたぎらせつつあること。 背中で冷や汗を流しながら、シィンは平静を装った。
/170ページ

最初のコメントを投稿しよう!

89人が本棚に入れています
本棚に追加