序章

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レニウムとは対照的に、感情の篭らない声音で淡々と言い放つ。 そうして言葉を返しながら、彼は右手に意識を集中させた。 じわり、と熱が右手を中心に拡がり、同時にどくん、と血がざわめいた。 (あと、少し。) 頭に血が上っているレニウムには、この右手の熱は気付かれていない。 彼はゆっくりと唇に笑みを浮かべると、ふとその手をレニウムに向ける。 ようやくはっ、としたような表情を浮かべた己の宿敵に照準を合わせ、小さく「クアル」とだけ呟く。 呪の気の塊であるそれは、咄嗟のことに避けきれずにいたレニウムに直撃した。
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