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「たるんどる!!」
曇天の下、今日も立海テニス部にお決まりの台詞が響き渡る。
皇帝の怒声の矛先は、これまたお決まりの切原赤也と丸井ブン太。
相変わらずの遅刻が原因だ。
「全く毎日毎日懲りずに遅刻するとは……少しは成長せんか!!」
毎日毎日懲りずに同じ説教する真田も成長してねぇじゃん……、なんて言えるはずもなく、ただ黙って耐えるしかなかった。
「大体お前等はレギュラーとしての自覚が足りん!!レギュラーたるもの他の部員に示しが付く様に――」
「その辺にしてやりんしゃい」
ちゅ、と軽い音と共に声の主の唇が真田の頬に触れ、同時にふわふわと柔らかい銀髪と帽子も触れ合う。
「なっ……!!」
「サンキューっス、仁王先輩!」
「助かったぜぃ!」
真田が言葉に詰まり一気に硬直した隙に、制服姿のままだった切原と丸井は部室へと駆けていった。
そんな二人に、仁王と呼ばれた彼は、微笑みながらひらひらと手を振った。
「な・何をするっ、仁王っ!!」
「程々にせんと、練習する時間も無くなるぜよ」
「そ・そうではなくて……さっきの………」
「キスか?」
「そういう言い方をするな!」
「なら『ちゅー』か?」
「表現の問題ではない!!」
「ハハハ」
顔を真っ赤にする真田、ケラケラと軽く笑う仁王、二人は恋仲という訳ではない。
仁王がレギュラー陣に『ちゅー』する事は特に珍しい事ではなく、隙有らば頬・額・首筋にまでキスをし、固まっている相手を見て毎回楽しんでいる。
大抵の人達は慣れ始めているので、軽く怒るか呆れるかのどちらかだが、真田は未だに反応が初々しいので、標的にされる事が多い。
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