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「ブン太と赤也の遅刻は相変わらずだけど、真田のお説教も相変わらずだね」
「む……」
切原・丸井の心の内を代弁し、微笑みながら二人に近付いて来たのは、立海テニス部部長である幸村精市。
「ほら、そろそろブン太も赤也も着替え終わる頃だろうから、練習始めるよ」
そう言い終わり、二人が頷こうとしたと同時に、鉛色の空から大粒の雫が降り注いだ。
「……」
「……」
「……ふぅ、俺達も部室に行くしかないね」
今度こそ二人は頷いた。
「あ、真田」
真田にしか聴こえない位の声量で幸村が呼び止める。
案の定、仁王は先に部室へ入っていった。
濡れるのが嫌なのか、はたまた練習時間が削られた所為か、眉間に多少の皺を寄せた真田は、無言のまま立ち止まり、幸村を見やる。
そして、満面の笑みで幸村が一言。
「惚れちゃ駄目だよ?」
キラキラとした笑顔で、再び部室へと足を速めた。
取り残された真田は固まっていた。
幸村の言葉の目的語が誰か、立海テニス部レギュラーなら誰しもが分かっている。
そう、詐欺師と呼ばれる仁王と恋仲にあるのは、神の子・幸村なのだ。
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