ある捨て猫の物語

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帰りの電車の中では、子猫は箱の中で熟睡していた。 鳴きはしないかと、空気抜きの為に開けた穴からのぞきこむと、満足気な寝顔が見えた。 そして、駅からは原付バイクのカゴに乗せた。風避けに箱の前にカバンをおいたのが間違いだった。 道路の段差でバイクが跳ねた瞬間、カバンが箱を押し潰してしまったのだ。 「みぃみぃみぃみぃ~💦」 かぼそい声にあわててバイクを止め、カバンをよけて、箱を元の形にもどした。 それからアパートまでは、慎重に運転して行った。 アパートについて、まず、ミルクを飲ませ、下の世話をしてやり、とりあえずベッドの上においた。 さて、寝床をどうしようか。 こんな手のひらサイズのチビ助を抱いて寝て、寝返りをうって押し潰したりしたら、と思うと一緒に寝る勇気はなかった。 あたりを見回すと、最近買い直したバイク用のヘルメットの箱があった。 大きさもちょうど良く、具合のいいことに、天板部分に持ち手の穴が開いていた。 小さめのバスタオルをたたんで敷いてから、子猫を入れてみるとちょうどおさまり、蓋をすれば子猫自身の体温で十分暖まるぐらいの空間ができた。 こうして、子猫との生活が始まった。
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