ある捨て猫の物語

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<子猫の引き取り手、探してます> 黒板に書かれたこの言葉が、出会いのきっかけだった。 専門学校のクラスメートがゴミ捨て場から四匹の子猫を拾ったというのだ。 「一匹ぐらいだったら、なんとかなるよ」 と軽い気持ちで声をかけ、放課後アパートまで見に行くことになった。 途中のペットショップで、哺乳ビンと猫用粉ミルクを購入して、アパートへ。 部屋では、まだ目も開かない子猫が四匹、ミィミィ鳴きながら待っていた。 とりあえず、ミルクを与え、下の世話をしてやりながら、クラスメートの話を聞いた。 彼女の話では、通りかかったゴミ捨て場のゴミの中から子猫の鳴き声が聞こえ、探してみると口をきっちり縛ったスーパーの袋から声が聞こえるとわかって、あわてて開けてみると四匹の子猫が息も絶え絶えの状態で入っていたという。 話を聞いて、その場にいた全員が、可哀相と思うと同時にこんな残酷な捨て方に怒りを覚えた。 四匹の内訳は、三毛猫♀二匹、赤白♂一匹、黒白♂一匹であった。 みんなでミルクをやり、濡らしたティッシュで尿道口を刺激して下の世話をしてやると、なんと二匹が血の混じったオシッコをした。顔も鼻水と目ヤニで大変な状態だった。 顔も濡らしたティッシュでキレイにしてやり落ち着いたところで、どの子を引き取るかの話をした。どの子も可愛く、選ぶに迷ったが、真っ先に抱き上げた黒白にすることにした。 途中で購入してきたドーナッツの箱の中身をみんなに食べてもらい、その空箱にフェイスタオルを入れて、ベッドを作った。 そこに、ミルクをたらふく飲んで、下の世話をしてもらい、さっぱりして寝込んでいる子猫をそっと入れて帰宅の途についた。
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