ある捨て猫の物語

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朝6時きっかりに ゛みぃみぃみぃみぃみぃ゛ と鳴きだす子猫。 下手な目覚ましよりも正確で、しかも慌てて飛び起きるから、かなり効率がいい。 ミルクをやり、下の世話をしてやる。 それから、自分の支度をして、仕事へ。 昼に戻ってきて、また世話をしてから、今度は専門学校へ。 学校から戻ってくると、また世話をして。 夜中に起きるのはしんどいので12時まで起きていて、世話をしてから就寝。 そして、また6時に起きる。 そんな生活が一ヵ月続いた。 さて、子猫に名前をつけないと………どうしよう💧 寝転んでテレビを見ながら、お腹の上でもそもそ動き回るのを見ながら、考えた。 ちょうど、アニメをやっていて、その中にウサギのような耳を持つぬいぐるみみたいなキャラクターがあった。 ¨もこな¨ 名前の響きが、子猫の動き回る仕草にマッチしていた。 「よし、今日からお前はもこなだぁ~」 (オスだけど、まっ、いっかぁ~) しかし、このネーミングが後に誤解を招くことになろうとは、この時、思いもしなかったんである。 さて、もこなを引き取って5日目の朝のこと。 いつもなら、朝6時きっかりに起こされるのに、静過ぎた。 ゙まさか、死んだんじゃ゙ 慌てて箱の蓋を開けて見ると、真ん丸くなって眠っているもこながいた。 生きてることを確認して、安心しつつも、そっと抱き上げてみた。 明らかに元気がなかった。 とりあえず、ミルクを飲ませると、ちゃんと飲んだ。 下の世話をしてから、後ろ髪引かれる思いで仕事へ行った。 その日は土曜で学校は休みだったから、仕事を終えてアパートに即効戻った。 朝からみれば、元気にはなっていたが、やっぱり動きが鈍い。 財布の中身に一瞬迷いは生じたものの、獣医さんへ連れていく決心をした。 動物病院に行き、受け付けで所持金が少ないことを話すと、獣医さんがわざわざ受け付けの外まで来てくれて、もこなの様子を診て言った。 「ミルク飲んでる?食欲があれば飲み薬だけでいいから、そんなにかからないよ」 その言葉に安堵しつつ、診察を受けることに。 結果は風邪と膀胱炎、そして風邪からくる目ヤニだった。 目薬と抗生剤を処方してもらい帰宅した。 そして、この受診が兄弟との運命の別れ道となった。
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