ある捨て猫の物語

6/17
前へ
/17ページ
次へ
抗生物質と目薬による治療を二週間ほど、続けたおかげで、もこなの目やにの原因になった風邪と膀胱炎は完治し、部屋の中を元気に走り回れるぐらいになった。 そして、生後一ヵ月半が過ぎようとしている頃、最初にもこな達を拾ったクラスメートから電話がきた。 「もこな、どうしてる?」 妙に元気の無い声 「元気にそこら中走り回ってるよ」 「そうか…ならいいんだ」 「どうしたの?なんかあったの?」 しばしの沈黙があり、彼女は言った。 「マロが死んだの…この間ポコが亡くなったって連絡があって、確認したらチンも死んでた…」 つまり、彼女が手元に残した一匹を含め、もこなの兄弟は皆死んでしまったのだ。 「もこなが元気ならそれでいいんだ」 彼女は涙声で、そう言うと電話を切った。 ひきとったそれぞれが貧乏学生だった。他の三人は病院に連れて行けなかったんである。 病院に行くことができた、もこなだけが生き残ることができた。 残りの三匹の分も、もこなを大事にしようと心に決めた。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加