ある捨て猫の物語

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「最近、帰るの早いよね(笑)」 突然、専門学校のクラスメイトからそう言われた。 「ま、可愛い息子が待ってるもんね~」 と続けて言われ、苦笑するしかなかった。 遠く故郷を離れ、独り暮らしをしてた私は、一人で夕食を食べるのが嫌で、よくクラスメイトを誘って外食することがあったのだ。(と言っても、給料日後の数日だけだったが) もこなを飼うようになってからは、ミルクの時間や、下の世話の時間の関係で、速攻で帰宅するようになっていた。 つまり、アパートに帰るのが苦痛ではなくなっていたのだ。 離乳し、ある程度成長すると、原チャリのエンジン音をしっかり聞き分け、玄関を開けると、ちゃんと待ってくれていた。 それがまた嬉しくて、早く帰ろうと思うようになっていたのだ。 そんな私の様子に、仲の良いクラスメイトの間で、もこなの事を「隠し子」と、冗談で呼ぶようになっていた。
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