209人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな僕の声に呼応するかのように、保が振り返った。
「久しぶり」
お供えを置き、仏壇に手を合わせた後、僕は二人に歩み寄った。
「雅兄もスイカ食べる?婆ちゃんが井戸水で昨夜から冷やしてたんだぜ」
「貰おうかな」
二人の空いているスペースに腰を下ろせば、俊幸がスイカを差し出してくれる。
「何で5年も来なかったの?俺等、雅兄が来るの楽しみにしてたのに」
新しいスイカに手を伸ばしながら、問いかけてくる保の声は怒っている。
「ごめんね。色々忙しかったんだ」
健ちゃん達にも使った言い訳をまた、此処でも使ってしまう。
「言いたくないなら無理には聞かないけど、雅兄が来なくなってから、爺ちゃんも婆ちゃんも、張り合いなくしたみたいで、正直見てられなかったんだぜ」
それはそうだと思う。
だって僕は、ある事実を二人に告げてしまったのだから。
そのせいで、僕は二人に曾孫の顔さえ見せてあげることはできない。
それどころか、奥さんの顔さえも。
「でも雅兄が来てくれて良かったよ。二日前から二人共凄く楽しそうでさ、雅兄が来るなら、昼はアレにしようか?夜はどうしよう?なんてはしゃいでたんだぜ」
想像した通りの言葉に、目頭が熱くなる。
「俺等、三日前から泊まってたけど、あんな楽しそうな二人を見たのは、雅兄と電話した後からだぜ」
どこかふてくされたような俊幸の言葉に、保が大きく頷く。
最初のコメントを投稿しよう!