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「何にせよ、雅兄が来てくれた事だし、俺等は今日帰るけど、これであの二人も寂しくないんじゃない?」
「だといいけど」
本当は今日、婆ちゃんの顔を見るまで不安で仕方なかった。
自分の事を暴露して、受け入れてもらえるはずなんてないって思っていたから。
だけどその不安は杞憂で、出迎えてくれた婆ちゃんは、電話の時と同じように以前と何一つ変わっていなかった。
「此処に居てたん。お茶淹れたから、向こうにおいで」
スイカをかじっていれば、背後から婆ちゃんの声。
「これを食べたら、そっちに行くよ」
まだ口の中にスイカを入れていた僕に変わって、返事をしたのは保。
「こっちは涼しいし、ゆっくりしてたらええよ」
気を悪くしたわけでもなく、婆ちゃんはそれだけ言って立ち去る。
従兄弟同士で話していたせいか、逆に気を遣わせたかも……。
「とりあえす、これだけ食べたら、あっちに行こうぜ」
皿に残った最後の一切れを手にした俊幸が、そう締め括る。
それから僕達は他愛のない話をし、俊幸が食べ終わるのを待って仏間を後にした。
納屋から戻ってきたのか、部屋には人が集まり座る場所もままならない。
僕はキッチンの椅子に座り、親戚や従兄弟達の会話に耳を傾ける。
全く知らない話もあれば、ああって思う話もあったり、聞いていて飽きることはない。
「雅春、車の調子はどないや」
婆ちゃんの淹れてくれたお茶をすすっていれば、対面に座っていた爺ちゃんに話かけられる。
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