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「問題ないよ。この間車検に出した時に、故障箇所も見てもらったし」
休日しか乗ってないせいか、特に異常も見つからなかった。
「大事にしてくれているんだな」
タバコに火を点けながら、嬉しそうに爺ちゃんが笑ってくれる。
「そりゃね。爺ちゃんに買ってもらった車だもん」
一緒に車屋さんを回り、『中古車でいい』って言う僕を無視して、雪が降っても動けるようにと、4WDの新車を購入してくれたんだ。
「あの時は、雅春の意見も聞かんと勝手に決めてしまったからな、本当はイヤだったんやないかなと思ったんや」
「まさか。だったら直ぐに売りに出してるよ」
本当はそうするつもりだったけど、いざ乗ると愛着が沸いてしまって手放せなくなったんだよね。
「気に入ってくれているならいいんや」
ほっとしたように紫煙を吐き出し、お茶を一口すする。
それっきり会話は途切れる。
元々爺ちゃんは口数が多い方じゃないから、別に沈黙は苦痛じゃないんだけどね。
「僕もタバコ吸っていいかな?」
「吸うたらええ」
そう言って、爺ちゃんが自分のタバコを僕に寄越してくれる。
「ありがとう。でも自分のがあるからいいよ」
せっかくだけど、爺ちゃんが寄越してくれたタバコを押し返し、ポケットから自分のを取り出した。
「セブンスターか。キツイのを吸いよるな」
「そうかも……。でもこれしか吸えないんだよね」
色々試したけれど、この銘柄が一番しっくりくるんだ。
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