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兄さんからの許可が下りたことで、二人のテンションが上がる。
「たまには羽目を外すのもええやろ。二人ともまだ高校生やからな」
はしゃぐ二人を横目に、爺ちゃんがしみじみと呟く。
こうしていると、まるで5年前の事が嘘だったようにさえ思えてしまう。
「雅君は彼女いないの?」
今まで黙っていた美知子さんが、いきなり話題を僕に振ってきた。
その瞬間、爺ちゃんと婆ちゃんの間に気まずい空気が流れた。
「仕事を覚えるのが忙しくて、今はその余裕がないんですよ」
事実半分、嘘半分を織り混ぜて言い逃れる。
こんな狡い手段を覚えたのは、高校時代だった。
「雅君の事やから、そのうち可愛い彼女が見つかるわよね」
その可能性は0だけど、教える必要のない事だから、僕は曖昧に笑って誤魔化してしまう。
「それより雅兄、裏でバトミントンでもしようぜ」
まるで空気を読んだかのように、俊幸が僕の腕を掴んでキッチンから連れ出してくれた。
「美知子叔母さんの言葉なんて気にすんなよ。単なる興味本位なんだからさ」
バトミントンの羽を打ちながら、俊幸が僕を慰めてくれる。
どうやら彼は落ち込んでいるのだと勘違いしているらしい。
「気にしてないよ」
これは事実。
だって気にしても仕方ないもん。
「でもさ、雅兄の場合、彼女より彼氏の方がしっくりくるような気がするんだよね」
「あっそれ、俺も思った」
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