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「雅春、迎えに来たぞ」
玄関のドアが開き、健ちゃんの声が響き渡る。
「今行く。ほら、保も俊幸も行くよ」
テレビを見ていた二人の腕を掴み、半ば引きずるように玄関まで連れて行く。
「急で悪いんだけど、この二人も一緒にいいかな?」
「いいぜ。どうせ雅春が車出すんだろう?」
「そうだよ」
中学までバスはあるけれど、帰る頃には最終も終わっている。
それも考慮して、最初から車で行くつもりだった。
「ついでに俺もよろしくね。雅春のインプレッサ、一度乗りたかったんだ」
「そっちが目当てだったから、豪の言葉にのったわけね?」
可笑しいと思ったんだ。
待ち合わせ場所も時間も決めてたのに、健ちゃんに迎えを頼むだなんてさ。
「気づくのが遅いんだよ。雅春が車から降りて来るのが見えた時から、乗りたくて仕方なかったんだよ」
「分かったから乗りなよ。二人は後ろね」
まさか初めて助手席に乗せる奴が健ちゃんとは……。
ちょっと、否、かなり凹む。
「じゃあ行ってくるね」
まだキッチンにいる二人に声をかけ、僕は車へと向かった。
「やっぱり4WDはいいよな。しかもMT。俺もMTで免許取れば良かった」
「健ちゃんATなんだ。MTだったら運転変わってもらえたのに」
なんて言いながら、他の奴にステアリングを握らせる気なんてないんだけどね。
山の日暮れは、市街地に比べて早い。
まだ6時半だというのに、もう夕闇が迫り月が輝き始めていた。
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