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盆踊りが始まるまでまだ時間があるというのに、グラウンドには浴衣を着た女の子や、家族連れでごった返していた。
「豪達はまだみたいだな」
待ち合わせの体育館の前には、女の子達が陣取り僕たちをチラチラと見ている。
「あの子、めっちゃ可愛い」
その中に好みの女の子を見つけたのか、保が声をあげる。
「右の子も可愛いよ。雅兄、俺等適当にしてるから羽伸ばしてきていいぜ」
どうやら二人の目的は盆踊りではなく、女の子をナンパする事だったらしい。
「分かったよ。帰る時は携帯鳴らすね」
「了解」
僕の言葉に頷いて二人はさっきの女の子達に声をかけに行ってしまった。
「流石は高校生。ナンパだなんて度胸あるよな」
二人の背中を見送りながら、健ちゃんがしみじみと呟く。
「雅春、本当に帰ってたんやね」
肩を叩かれ振り向けば、豪が誰かと一緒に立っていた。
「忘れたんか?和憲(かずのり)や」
言われてみれば中学の時の面影が……。
それから続々と懐かしい顔ぶれが揃う。
とはいえ、一学年で男子が20人ぐらいしかいなかったんだけどね。
それでも全員が集まるなんて、豪の呼び掛けは凄いなって実感する。
俄に同窓会となってしまった僕達は、明らかにこの会場では浮いていた。
「出店で何か買って、裏庭にでも行こうや」
そう言い出したのはお調子者の裕二。
「そうだな。邪魔になりそうだし」
一成の一言で決まり。
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