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「なら、10分後に裏庭に集合な」
達也の言葉を受けて、皆散り散りに目当ての出店へと向かう。
だけど家で食事を済ませて来た僕は、一人手ぶらで裏庭へと向かった。
「何も買わんかったんや」
焼きそばを片手にやって来たのは、隆行(たかゆき)。
「うん。家で食べて来たから」
今日が盆踊りだって知ってたら、食事も断れたんだけど、仕出しなんて頼まれてたら食べないわけにはいかないじゃん。
皆思い思いの食べ物を片手に、裏庭へと集まってくる。
「しかし、男子が全員揃うなんて、俺も予想してなかったわ」
いか焼きを頬張りながら、全員を集めた豪が感心したように顔ぶれを見回す。
「たまたまや。盆で暇やから帰ってたようなもんやし」
「でも豪から連絡もろた時は驚いたで。まさか雅春が帰って来るなんて思うてなかったからな」
学の言葉に全員が頷く。
「しかし偶然って凄いな。今日、健と豪が盆踊りの準備をしてへんかって、雅春が立ち寄らへんかったら、会われんかったんやで」
「そうやんな。ほな、偶然に感謝やな」
わざとらしく手を合わせる裕二に、皆が笑う。
だけど本当に偶然だったのだろうか?
僕としては偶然とは思えない、何かの力が動いているような気がしてならなかった。
勿論、口には出せないけれど。
やがて盆踊りが始まったのか、太鼓や笛の音が聞こえてくる。
けれど僕達は誰一人動こうとはせず、昔話に華を咲かせていた。
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