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「なあ、せっかくやから肝試しせんか?」
話もそろそろ尽きかけた頃、裕二がいきなりそんな提案をする。
「面白そうやな。コースはどうするんや」
楽しい事が大好きな健ちゃんが、真っ先にその提案に食い付いた。
「単に学校を一周するだけはつまらんから、武道館の前をスタートにして、ほら、神社の裏にちょっとした空き地があったん覚えてるか?」
神社の裏に空き地……?
そういえば、美術の写生で行ったような気がする。
「覚えてるで。廃車になったバスがあったなぁ」
「思い出した。あそこやろ。何や昼間でもあんまり陽が当たらん、鬱蒼としたとこや」
どうやら皆、思い出したみたい。
「その空き地を抜けて、神社でお参りして、また同じ道を通って此処に戻ってくるだけや。簡単やろ」
「それ、ほんまに肝試しになるんか?」
学の疑問は、僕の疑問でもある。
「学と雅春は去年いてなかったから知らんやろうけど、めっちゃ怖いで。何せ空き地から神社に抜ける道は、照明が届かへんからな」
そう教えてくれたのは宏(ひろし)。
「男ばっかりやから、今年は一人ずつ順番な。一人が戻って来たら、次の奴が行くんや。道は一本しかないし、迷わんとは思う」
それから5分後。
じゃんけんで順番を決め、一番最初に健ちゃんがスタートした。
「そういや、あの神社って何か伝説とかなかったっけ?」
タバコを吸いながら、隆行が僕に話かけてくる。
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