盆踊り

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   「そういえば、中2の時に地名の由来とか調べたっけ。あの時、此処の地名を担当したの誰の班だったかな?」  少なくとも僕の班ではなかったのは確かだ。  「俺の所ではないな。裕二の班じゃないか?」  「何がや」  自分の名前が出てきた事に反応して、少し離れた場所からこっちにやってくる。  「ほら、中2の時だったか、地名の由来を調べたの覚えてるか?」  「ああ。分厚い町史とにらめっこしたなぁ」  「あの時に、神社の由来とか調べてないか?」  隆行の言葉に、その時の記憶を思い出そうとしているのか、裕二の眉間に皺が寄る。  「忘れた」  けれどそんな顔は長く続かず、1分もしないうちに元に戻った。  「まあ、裕二の記憶力はそんなもんだよな」  最初から期待していなかったのか、隆行の態度はあっさりしたモノ。  「晃司なら分かるんやないか?」  「どっちのだよ」  名前で呼ぶと紛らわしいけど、下の名前が同じ奴と、名字が同じ奴が最低でも二組いるんたよね。  晃司と幸司、松尾晃司と松尾裕二。  名字で呼ぶとややこしいし、かといって名前で呼んでもややこしい。  「俺と同じ名字の方や」  裕二なんて、晃司を呼ぶときは名前なんて呼ばないもんね。  初めて聞いた時は吃驚したよ。  だって、『おい。俺と同じ名字の男』だもん。  ちなみに女子にも松尾さんがいるんだけど、この場合も『男』が『女』に変わっただけだったり……。  
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