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宏が怯えたように、近くにいる人に誘いをかける。
「俺が一緒に行ったる」
健ちゃんの話が気になって仕方ないのか、達也が同行を申し出た。
「二人で行ったらええよ。この際ルールはナシや。一人で行ける奴は一人でもええし、怖い奴は二人で行ったらええ」
裕二のその一言に、張り詰めていた空気がホッとしたように緩む。
「じゃあ行くで」
先に歩き出した達也の後を追うように、二人は裏庭から姿を消した。
「健が見たお化けって、どんなんやったん?」
恐怖心よりも好奇心が勝ってしまうのか、その時の様子を聞こうと、残っていた彼等が健ちゃんの周りに集まる。
「……どんなんって言うても、この暑い盛りに、何やえらい高そうな着物着てる男の霊や。誰か探してるんか、名前をずっと呼びよった」
話す事で冷静さを取り戻してきたのか、さっきのように語尾の震えもなく、はっきりと聞き取れた。
「名前?」
「そうや。はっきりとは聞き取れんかったけど、『………る、……はる……』って、もう怖くて怖くて一目散に逃げてしもたわ」
それは確かに怖いよね。
今の時期に着物を着ていること自体おかしいし……。
「ほな、顔とかは見てへんのやな?」
「そんな余裕なんかあるかい」
学の言葉に、健ちゃんが即答する。
「なら、何で男やって分かったんや?」
「せやから、声やって。女の声にしては低すぎるねん」
「なあ、俺ちょっと思い出したんやけど……」
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