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その間に此処に近寄った事もなければ、こうして神様を見るのも初めて。
そんな神様に『我が半身』と言われても、どう答えていいのかが分からない。
『雅春が知らぬのも無理はない。朕が勝手に半身に定めたのだから』
そんな事を勝手に決めるな!?
そう言いたい衝動を、理性を総動員して押し留めた。
「どうして僕なんですか?」
『朕が気に入ったからだ。それ以外の理由はない』
「それだけの理由で、貴方は自分の半身を決めるんですか?」
『それの何が悪い?朕にはそれだけの力があるのだぞ。雅春、朕と共に来い。贅沢も思いのままぞ』
呆れてモノが言えない。
神様というのは、なんて強引で傲慢な生き物なんだろう。
『雅春、朕の手を取れ』
「……お断りします……」
いくら神様だとしても、傲慢で強引な話に頷く気にはなれない。
『人の分際で、朕の申し出を断ると?ならばこの地がどうなっても良いのか?』
そして今度は脅迫。
「神が人を脅す……か。だから人々が信仰を忘れてしまうという事に、気づきもしないのだ」
空気が邪気を孕んだ瞬間、第三者の声が割って入ってきた。
『貴様は……。今はこの地から離れていたのではなかったのか?』
「俺が何も仕掛けずに、この地を離れたと思っていたのか?」
その言葉を聞いた彼の顔が悔しさに歪む。
『結界を張ってあったとはな。どうやら朕は貴様を侮っていたようだ』
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