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「よく分かったな」
どこまでも彼を馬鹿にした発言に、僕は怒りを覚えた。
勿論、一人蚊帳の外に置かれているこの状況も、僕の怒りに拍車をかけている。
怒りを押さえている間も、彼等の言い争いが途切れる事はなかった。
「いい加減にして下さい。貴方がたが神か何か知りませんけど、言い争いなら天界でどうぞ。僕は友人と一緒なので失礼させていただきます」
付き合いきれなくなってそう言えば、背後からもの凄い力で抱き寄せられた。
「ダメだ。雅春は俺の伴侶だからな、一人にさせるわけにはいかない」
『何を言うか。雅春は朕の半身。貴様には何の権利もありはせぬ』
今度は僕を間に挟んでの睨み合いが始まる。
いい加減にして欲しい。
それが正直な僕の気持ちだった。
「二人共、雅兄が困ってるじゃん。解放してあげなよ」
「そうそう。雅兄は肝試しの最中なんだし、帰りが遅いと皆が心配して押し掛けてくるぜ」
まるで僕の危機を救うかのように、現れたのは保と俊幸。
『何故、人間が……?』
驚きを隠せない彼に、二人が冷ややかな目を向ける。
「俺等の姿が見抜けないくせに、よくまあ雅兄を半身に欲しがったもんだよな」
「眷族のくせに、俺等の事も知らないでさ」
二人が登場したことによって、僕を抱き寄せていた腕は離れたけれど、疑問は増えるばかり……。
「とにかく雅兄は、皆の所に戻ってて。俺等はこの二人と話したい事があるから」
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