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「あんまり遅いと皆、心配すると思うしさ」
二人の言い分は最もだし、それにこの場から離れるには絶好の機会。
「ならば俺が雅春を送り届けよう。今は結界を張ってあるし、出口も塞いでしまっているからな」
「諏王(すおう)、ならば雅兄に詳しい説明を頼むな」
「説明なんかいらないよ。神だとか半身だとか伴侶なんて言われたって、僕は信じないんだからね」
精一杯の抵抗をしてみるけれど、この場に居る4人には通じない。
「信じたくない気持ちは分かるけど、現実を受け入れる事も大事だよ」
「家に戻ったら、詳しく話してやるから、雅兄は諏王に出口まで案内してもらいな」
今が肝試しの最中でさえなかったら、二人の襟首を掴んで締め上げていただろう。
だけど悲しいかな。
現実には、皆の元へ帰らなければならない。
「雅春、行くぞ」
諏王と呼ばれた神が、そんな僕の手を引いて歩き出す。
「……すまなかったな。俺が離れている間に、雅春に不愉快な思いをさせた」
そう謝る諏王からは、さっきまでの刺々しさは消えていた。
「貴方がたは一体何者なのですか?」
この世のモノとは思えない美貌に、神々しい雰囲気を身に纏っている青年に問いかける。
「この地を守護する龍神だと言えば、雅春は信じるか?」
なのに逆に問い返されてしまう。
「では、さっきの彼も?」
「アレは俺の眷族だ」
その問いを無視して、更に問いを重ねれば、苦い声で答えてくれた。
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