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だから彼に対して偉そうだったんだ。
なんて納得してしまう。
その間も歩みは止まらず、神社の出口がようやく見えてくる。
「此処を抜ければ、雅春は友人の所に戻れる。だがその前に、俺の話しを聞いてくれないか?」
疑問形を取りながらも、僕の答えを聞かずに諏王は話し始めた。
「俺がこの地にきたのは千二百年前。その時、この地は大干魃で水はカラカラに干上がっていた」
昔からこの地は雨が少なく、干魃は当たり前のように人々を苦しめていた。
それを見かねた国司がこの地で、雨乞いの祈願をした。
「その時、俺の姿は蛇だった。祠の前の小池で寛いでいたら、祈願の声が聞こえたのさ。その声につられて池から出たら、俺は龍へと変化し、雨雲を呼び寄せてしまった」
何故だろう。
祈願により龍神に昇格したというのに、諏王は喜ぶどころか、苦い後悔があるように思える。
まるで神になどなりたくなかった、とでも言うように。
「後悔されているんですか?」
「してるね。あの時からずっと。神にさえならなかったら、俺は蛇として一生を終えるはずだった……」
吐き捨てられた言葉は、国司を恨んでいるようにも、自分の好奇心を憎んでいるようにも聞こえた。
「貴方は、人になりたかったんですか?」
蛇としての一生を終えれば、輪廻に組み込まれ、人としての生を受けていたかもしれない。
「どうだろう。俺自身にもそれは分からない。神格化した事で、輪廻から外れてしまったからな」
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