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そう言われても、僕は彼が誰なのか思い出せない。
確かに見覚えがあるというのに。
「忘れてるんか?俺や。すぐ下に住んでた斎藤健や」
「健ちゃん!?久しぶりだね。健ちゃんも帰って来てたんだ」
意外な場所での再会に、懐かしさが込み上げる。
「俺だけやないで。学に幸司、達也ほとんど全員帰ってる」
「本当に!?」
級友達の名前を聞いて、更に心が騒ぐ。
「ほんまやって。豪(たけし)、雅春が帰って来たで」
そんな健ちゃんの声が、大して広くもないグラウンドに響き渡る。
「ほんまや。雅春や」
その言葉を聞き付けた男達が、作業の手を止めて僕と健ちゃんの回りに集まってくる。
「元気そうやな。同窓会にも顔出さんから、女子が嘆いとったんやで」
「ごめんね。色々と忙しかったんだよ」
豪の責めるような口調に、僕は言い訳を口にする。
「まあええわ。こうして元気な顔見れたし、2、3日はこっちに居るんやろ」
「うん。そのつもり」
「やったら、今晩の盆踊りに来たらええ。久々に皆で集まろうや。女子は抜きで」
そう言ったのは健ちゃん。
皆で集まるのが好きで、こんな風に話を纏めていく。
「ええやん。ええやん。ほんなら俺は、帰って来てる奴に声かけるわ。まあ、雅春が帰ってるって言うたら、全員来ると思うけどな」
こうやってメンバーを集めるのは豪。
他にもムードメーカーの幸司に、面倒見がいい学。
お調子者の裕二に、真面目な一成。
一人一人を思い浮かべれば、自然と笑みが零れる。
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