帰省

8/15
前へ
/98ページ
次へ
   車1台が通れるだけの山道を登り、少し拓けた地に爺ちゃんと婆ちゃんが住む家がある。  5年も顔を出さない間に、瓦は綺麗になり、畑の横には見慣れない道が造られていた。  そして庭には、既に親戚が集まっているのか、車が3台停車されている。  その空いているスペースに停めれば、車の音を聞きつけた婆ちゃんが出迎えてくれた。  「遅いから心配したんよ」  後部シートから荷物を降ろしていれば、いきなり小言。  「ごめんね。中学校に寄ったら、健ちゃんに会って話し込んじゃったんだ」  「それやったらええんや。事故にでも遭ったんやないかが心配やっただけやから」  両手に荷物を持ち、玄関に入れば違和感を感じる。  「改装したの?」  5年前まで土間だったそこは、段をつけ床張りにし、ちょっとした客をもてなせるように、応接セットが置かれていた。  「そうやで。ええやろ?」  「うん。吃驚したけどね」  靴を揃えて、用意されたスリッパに履き替える。  キッチンもまた、土間から床へと変わっていた。  それだけではなく、家電も新しいモノになっている。  「凄いね」  そんな言葉しか出て来ない。  「雅春君、久しぶり」  キッチンのすぐ隣にある部屋から、父の妹である佳奈さんが声をかけてくる。  「佳奈姉さん、お久しぶりです。兄さんも」  昔から叔父さん叔母さんなんて言った事がないから、その癖で今だに兄さん、姉さんって呼んでしまう。     
/98ページ

最初のコメントを投稿しよう!

209人が本棚に入れています
本棚に追加