帰省

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   佳奈姉さんは、小柄でいつも優しい笑顔を絶やさない人。  兄さんも似たような感じかな。  子供の時からこの二人が怒った所を、数えるぐらいしか見た事がない。  それぐらい僕の両親とは正反対。  「車が3台あったけど、後は誰が来てるの?」  この部屋にいるのは兄さんと姉さんだけ。  後は誰が居るのかも分からない。  爺ちゃんもいないし……。  「大阪から美知子達が来てるよ。後は紗智さん夫婦」  美知子さんは、父の妹で佳奈さんの姉。  だけど爺ちゃんの妹夫婦の養女になり、今は旦那さんと大阪で暮らしている。  「爺ちゃんは?」  「納屋にいると思うよ。きっと向こうで話でもしているんじゃないかな?」  そう教えてくれたのは兄さん。  「縁側にいったら、保(たもつ)と俊幸(としゆき)がいるわよ」  「二人共来てるんだ」  保と俊幸は僕の従兄弟。  「じゃあ僕は仏壇に線香をあげてきます」  そのついでに縁側にいる二人にも声をかけよう。  そう決めて、手土産を持って仏間に足を向ける。  昔の日本家屋だけあって、一室一室が無駄に広い。  襖を外せば、軽く20人は縦に並んで座れるんじゃないかな?  そんな部屋を三つ抜けて、仏間にたどり着く。  「えっ……?」  そしてまた、僕は驚かされた。  ずっと締め切りだったはずの仏間には、縁側が作られ、二人の少年がスイカを片手に何やら話をしていたのだ。  「雅兄、久しぶり」      
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