180人が本棚に入れています
本棚に追加
悲しいことなんか何もないのに、涙は後から後からポロポロと溢れてくる。
「どうしよう兄弟! お姉さんが泣いているよ! やっぱり具合が悪いんだ!」
「泣かないでよ、お姉さんっ。お姉さんが泣いていると、僕たちまで悲しくなるよ…」
「そうだ! ボスを呼んでこよう!」
「それが良いね、兄弟。ボスに頼んで早くお姉さんを休ませてあげなくちゃ!」
慌てる双子に、私を心配しなくても大丈夫だと告げたかったが、声が喉の奥に詰まって言葉にすることが出来なかった。
「待っていてね、お姉さん! 直ぐにボスを呼んでくるから!」
「僕たちがボスを連れてくるまで、ここからいなくなっちゃダメだよ、お姉さん!」
そう言って、双子は屋敷の玄関に向かって走り出した。
――その時――。
「お前らアリスを泣かしたなっ!!」
聞き覚えのある声が、私の背後から聞こえた。
その声に慌てて振り返ると、そこには会いたくてずっと捜していたボリスが、耳をピンッと立て、長い尻尾の毛を逆立てて、怒りも顕わに立っていた…。
最初のコメントを投稿しよう!