†第一章†

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悲しいことなんか何もないのに、涙は後から後からポロポロと溢れてくる。 「どうしよう兄弟! お姉さんが泣いているよ! やっぱり具合が悪いんだ!」 「泣かないでよ、お姉さんっ。お姉さんが泣いていると、僕たちまで悲しくなるよ…」 「そうだ! ボスを呼んでこよう!」 「それが良いね、兄弟。ボスに頼んで早くお姉さんを休ませてあげなくちゃ!」 慌てる双子に、私を心配しなくても大丈夫だと告げたかったが、声が喉の奥に詰まって言葉にすることが出来なかった。 「待っていてね、お姉さん! 直ぐにボスを呼んでくるから!」 「僕たちがボスを連れてくるまで、ここからいなくなっちゃダメだよ、お姉さん!」 そう言って、双子は屋敷の玄関に向かって走り出した。 ――その時――。 「お前らアリスを泣かしたなっ!!」 聞き覚えのある声が、私の背後から聞こえた。 その声に慌てて振り返ると、そこには会いたくてずっと捜していたボリスが、耳をピンッと立て、長い尻尾の毛を逆立てて、怒りも顕わに立っていた…。
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