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「何か用?」 夏希が冷たく尋ねると、夏姫はますます頬を膨らませた。 「用がなきゃ弟の部屋に入っちゃダメなの?」 「むしろ用があっても入ってきて欲しくないね。」 「夏希……最近やけに冷たくない?」 「別に。」 机から離れて、夏希は開けっ放しのドアを閉めた。 「また増えてる……本当に好きだね……小説。」 夏姫の座るベッドの正面には、今まで夏希がぼ~っと座っていた椅子と机がある。 その机の上の片隅に山積みになる本を見つめながら、夏姫は目を丸くしていた。 椅子の正面を姉へと向けて座った夏希が、その山となっている本の一番上を手にとり、ひらひらと振ってみせる。 「読む?」 「遠慮しとく。それよりさ、夏希宛てに荷物が届いてたよ。」 「荷物……ああ、そういやネットで買い物したんだっけ。」 彼女が後ろ手に持ってきたのは、夏希宛ての小包だったらしい。 手渡された夏希は礼を言おうとして……眉をひそめた。 「なんか……一度あけた形跡があるんだけど……」 「…………………。」
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