村長の朝のお話

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まだ皆が寝静まっている朝。裸の男がいた。いや、よく見ると裸ではなく純白のふんどしを身に付けている。 その男は遠目からでもはっきりと分かる程の巨体……否、筋肉の塊であった。筋肉の塊は井戸から一息で水を汲み上げ、その鍛え抜かれた肉体に水を被った。 滴る水滴も気にせずに筋肉は目を閉じ、開いた手を胸元で合掌させた。 「ふぉぉぉおおお!!!!!」 掛け声と共に体内に宿る気を爆発させ全身に行き渡せる。その男の体の周りでは大気がぐらりと揺らめき、さらに先程体に浴びた水滴が蒸発し水蒸気となりて煙りを上げる。 全身に駆け巡る輝かんばかりの青白い気の奔流を全て右拳に移動させる。 「滅殺獄竜気葬送!(めっさつごくりゅうきそうそう)」 その言葉と共に男は右拳を天に向かって伸ばす。莫大な破壊の力を込めた気の柱が天に向かって突き刺さる。 空が…… 割れた。 そう思える程の激しく強大な気の柱が雲を掻き消し快晴の空が広がっていく。 「ホッホッホ、絶好調じゃな」 みるみる内によぼよぼの体に戻る村長。今の技は以前ヒューイに空を舞い逃げ回られたので身につけた、手加減できない文字通り必ず殺す技である。
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