関係

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 ハラハラ散る白い結晶。 「寒い」を連呼する男。 私は彼に「そうね」と返す。 久しぶりに会う彼は、前と全く変わらない。 彼は小さな袋を取り出して、「お土産」と渡す。 私はそれを受け取り、「ありがとう」という。 袋から出てきたのは、ストラップ。 彼の携帯についてるやつと同じストラップ。 そして、私は心で溜め息をつく。 ―これは恋なんかじゃない― 二人で笑顔を交し、ありきたりの会話が始まる。 バレンタインデーは、もう間近。 私は愚痴る。 バレンタインの出費が多いと。 彼は言う。 俺にもチョコをくれと。 「彼女がいるでしょ?」 「彼女からも貰うに決まってんじゃん。友チョコ、頂戴」 彼は笑う。 「余ったらあげるよ」 ―去年はいらないって言った癖に― 心の声は彼に届かない。 あれこれ注文をつける彼に耳を傾けながら、心は悪態をつく。 ―去年はもらったら捨てるって言ってたじゃない―  そう、これは恋なんかじゃない。 私たちはただの友達。 彼にはちゃんと彼女がいる。 彼は私に「貢がせる」。 私は彼に「貢ぐ」。 そんな関係。 .
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