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次の授業で僕は藍川さんを観察することにした。
水泳の後の授業はどの学校でもみんな眠たげだ。
僕は襲い掛かる睡魔を堪えて少し前の席に座る藍川さんを観察した。
背はどちらかというと小さい。
髪はセミロングくらいだろうか、まだ少し濡れたその髪は黒く、教室に注ぐ太陽を鏡のように反射して輝いていた。
ストレート、というわけでもないがだからってウェーブがかかっているわけでもなかった。
覗く首筋が白かった
半袖のブラウスから見える二の腕も太くない
夏服の薄いスカートから透けた太ももだってすらっとしていた。
運動部ほど引き締まった体ではない
だけど文化部ほど体力が無さそうには見えない。
その時、藍川さんが先生に指さた。
「はい」と返事をする声も悪くなかった。
前に出て問題を解き先生の質問に答えていく。
受け答えだってはっきりしているし、成績は知らないけど頭は悪くなさそうだ。
席に戻る彼女を初めて正面から見据えた。
綺麗な二重に、黒い瞳が大きかった。それに少し濡れたようにきらきらしていた。
唇は少し赤いけど、女の子だし何か塗っているのかもしれない。
年頃の女の子なのに肌は滑らかだった。
僕には二つ上の姉がいるけど、中学時代からいつもニキビやらダイエットやら騒いでいたし、高校に入った今ではどうやって隠すか必死で、毎朝洗面台を占領されて迷惑だった。
…話を戻そう。
だからつまり、藍川さんは外見が悪い訳ではないんだけど、だからって男子が色めき立つような可愛さがあるわけでも無くて、モテるようには見えなかった。
実際この学年で一番人気があるのは隣のクラスの子だし、うちのクラスで一番人気があるのだって別の子だ。
二人ともまじまじと見たこと無いけど、正統的な可愛さだと思った。
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