野良猫ロック

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俺はどうやら生まれる時代を間違えてしまったらしい……いつもの場所でごろごろと寝転びながらそんな事を思う。 何より、物が多すぎる。多すぎて、本質を見失ってしまう。 時々俺は、世界の片隅で一人だけ取り残されているような気分になるんだ。時計の針は進んでいる。風も吹く。しかし俺と俺の周りの空間だけは動く事無く取り残されているような気分。嫌な時代だ。 しかし俺には、今の時代しか知らない、だから本当のところは、ただの現実逃避だ。昔っていつだ? 俺には分からない。 しかし良い部分だってもちろんあるんだ。たとえば俺みたいな野良猫に、餌を与えてくれる人は少なからずいる。俺は野良猫でありながら、そこらの飼い猫よりも良い飯を食っているかもしれないな。 一度とある飼い猫に、誰かに飼われている生活とはどのようなものかと尋ねてみた。奴はこう言ったんだ。 「良いもんだよ。夏にはエアコン、冬にはこたつやらヒーターやらがある。栄養失調になる心配も無い。グレイ、あんた、ノミが付いてるぞ。処理してもらえたら良いのにね」 俺は一度だけ奴等が普段食っているキャットフードとかいうものを食ってみた事がある。あれは食えたものじゃない。八百屋の主人がくれる魚や、猫好きの家の子供が晩飯の残りを俺にくれたりするが、それらの美味いことといったら。
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