謎の部活 平和部

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   ──夢を見た。  綺麗な女性と見つめ合い笑っている夢だ。  夢というよりは、綺麗な女性と笑っている場面が走馬灯のように流れている感じ。  仏頂面でそんな場面場面を眺めていた俺はぼやいた。 『…あの人、誰だよ……』 ──薄暗い部屋。  カーテンが少し開いていて、太陽の光がわずかに差し込んでいる。春の暖かな陽気が眠気を誘う。  窓の向こう側の電柱の上では、小鳥達の朝の合唱が心地よく響いている。しかし、静寂も長くは続かなかった。  ジリリリリリリリリリ……  目覚まし時計が耳をつんざく様な音を上げて鳴り響いた。すると、布団の前方が持ち上がりぽっかりと口を開いた。  突如として腕がすぅ~っと伸びると、目覚まし時計を乱暴にわしづかみにする。  任務を完了した腕は目覚まし時計が息絶えるのを確認すると、床に音も無く倒れた。  その行動は二度寝を意味していた。  小鳥の合唱が再開される。やはり、春のポカポカ陽気は眠気を…  椅子の上の目覚まし時計が叫び声を上げた。そのとたん、叫び声に加勢するように他の目覚まし時計たちがそれぞれの騒音を上げた。  布団の中で丸まっていた人物は眠たそうに目を擦ると、欠伸をしながら体を伸ばした。  寝癖で所々跳ねている頭を億劫そうに手櫛で直しながら、罵詈雑言をぶつけ合う目覚まし時計を止めると、リビングへ続く階段を欠伸しながら降りていった。  黒髪を掻きむしりながら欠伸を漏らすこの冴えない男の名前は、天草 災禍(あまくさ さいか)。  物語の主人公。……というよりは、俺。  俺は今年から高校生。いわゆる、ピカピカの一年生だ。  激しくどうでも良いが、“災禍”とは、災いという意味だ。両親のネーミングセンスが怪しい。 「こらっ、愚弟!! 早くしないと朝ごはんが冷めちゃうよ!!」  リビングから姉の声が響いてくる。正直に述べよう。五月蝿い。  ちなみに、姉の名前は天草 由美(あまくさ ゆみ)。  こちらは大学一年生。同じくピカピカの……笑  小柄で頼りない容姿と反して、家事、家計、食事、全てにおいて万能のしっかり者。  
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