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しばらく、そんなふざけたボードの数々を横目に眺めていたが、何となく向けた視線の先にあるものを見て不意に息を飲んだ。
舞い落ちる桜吹雪の中、背後から朝日を浴びてキラキラと粉雪の様に輝く純白の髪。
肩まで伸びたショートヘアーに、大きくて可愛らしい二重瞼の眼は前髪にわずかに隠されている。
そして、鎖骨まで伸びたもみあげは左右を向く度に柔らかに揺れる。
…それはまさしく、夢に出てきた女性だった。
彼女は、うっかりすると簡単に折れてしまいそうな細い腕で『地域の安心を作りましょう。平和部』というボードを必死に掲げている。
しばらくの間、彼女の必死に頑張る姿に見とれていたが、彼女と視線が合った瞬間、瞬時に目を逸らした。
顔が火照り、心拍数が上がったような感覚に陥った。
あまりにも恥ずかしかったので、来たときみたいに前屈みと早足で桜並木を歩き去っていった。
──それからというもの、不思議なくらい時間が早く過ぎていき、気が付くと1学年Cクラスの男子集団の中にいた。
「この高校、やっぱ面白れぇな」
「入学式と同時に部活動の紹介してたし」
「俺には帰る家がある!帰宅部部員募集中!! とか、やる気無いなぁ」
数人の男子が腹を抱えて笑い転げた。あの脱力感丸出しな募集にはさすがにネタとしか言えないものがある。
「やる気無いと言えば、ゴルフ部だよな」
「きっと奴らはゴルフのゴの字も知らないな…」
ああ、“みんなで遊ぼう”か。
「あと、あれだよ! 海洋調査部!!」
「あれは意味不明だったわっ!!」
《これからも暫らくくだらない話が続きますが、割愛します》
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