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「気になるといえば、平和部だよな」
「あれだろ? ゴミ拾いとか」
「それは、地域活動部の仕事だろ」
「─てか、二年の三木さんが部長だっけ?」
「部活紹介の時なんか、『平和部です。以上です』……だもんな」
「活動内容不明の部だよな」
「部長の三木さんは、紹介時間の30秒間ずっと固い表情で立ち尽くしてたもんね……」
この男子集団お約束の沈黙タイムが始まった。
すると、背後からいつもの寒気に近い気配を感じて俺は振り返った。
見ると、小さな少女が背中にしがみ付いていて、こちらを上目遣いしている。
こちらの幼女さんは、俺の幼馴染で、ご近所さんの鬼灯 結香(ほおずき ゆか)だ。
長い黒髪が幼い顔だちを覆い隠している為か、かなり暗い雰囲気を醸し出してる。
「さいが君……部活…何にするの?」
結香は途切れ途切れ、抑揚の無い声で問いかけてきた。
「そんなこと、俺の勝手だろ」
突き放すような答えを聞いた結香は、頬を膨らませると口をへの字に曲げた。
俺は知っている。結香のこの態度は作戦なのだと。
いかにも不機嫌そうな顔でチラチラと俺の様子を伺い焦りを誘う。まさに静かなる尋問だ。そんなことは分かっているのだが…結香はズルい。
俺がいつまでも黙っていると、追い討ちをかけるように目元を潤ませて泣き付いてくるのだ。
自称紳士な俺が『女の涙』に弱い事を知っている上での犯行だから、なおタチが悪い。
「うぅ…さいが君が…さいが君がぁ…ぐすっ」
「だぁぁぁああっ、泣くな結香」
とりあえず、結香の肩を掴むと首を前後に振った。
「…ぐすっ…じゃあ、教えてよ…」
結香は小動物を思わせる愛らしい上目遣いで俺を見つめてきた。
いつも思うが、結香は可愛い。俗に言うロリコンからすれば、国宝級の少女だろう。それ故に、結香の魔力の前に俺は無力だった。
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