謎の部活 平和部

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  「…仕方ないな…俺は平和部に入部するつもり。お前はどうするんだ?」  結香は可愛らしく首をかしげると、「私も…平和部が良い…」と呟いた。  思えば、いつもそうだった。中学に入るときも、中学の部活を決める時も、受験の時も。  俺から意見を聞きだしては、同じものを選択する。不思議な子だ。  自分の考えで動く事が面倒だから人任せにしているだけなのだろうか?  こういうのを四字熟語で『付和雷同』と言うらしい。  ふとそんなことを考えてると、前の席から入部届の紙が配られてきた。面倒だから第2希望とかは無視して、第1希望に走り書きで"平和部"と記入した。  思えばこの高校、入部させる時期が異様に早いな。中学時代なんか、5月頃からだったのに……  一方、結香は俺が記入したのを盗み見ると、自分の紙に"平和部"と丁寧に記入した。 「また…一緒だよ…さいが君」  結香は周りの空気に溶けてしまいそうなくらい小さく透き通った声で囁くと、入部届の紙を大事そうに四つ折りにした。  結香は首まで伸びた前髪を左手で左右に分けると、右手を胸元できゅっと握った。  * ──放課後。 といっても、今日決めた部活動の部室に足を運ばなくてはいけないという謎な義務があるから、どちらかといえば授業の延長のような時間だ。 「──にしても、この校舎は無駄に広いな……」  隣を歩く結香に聞こえるようにわざと大きな声でぼやく。  この行為は、結香に『道に迷っていて面倒だから助けて』と言っている様なものだ。  結香は、俺が意味も無く風になびかせていただけの地図を黙って奪い取ると、一通り目を通して周囲を見渡した。近くにあった図書室と地図のそこを重ね合わせる。  結香は目的の場所の位置が分かったらしく、右手で地図を持ったまま、無表情で左指を進行方向に向けた。 「ここをまっすぐ…」  俺は幼い頃と同じ様に頭を撫でてやると、結香を先導にして部室に向かった。結香は俺の手のひらが頭に触れると、心地良さそうに目を細めた。  * ──ここは、第三相談室前。 部室棟の隅っこで、二階のこの部屋の前に俺たちは辿り着いた。 「初めまして!平和部に入部しに来ました……って、アレ!?」  
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