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と。俺が目を離した隙に、結香と知抄との睨み合いが勃発したが、先輩が睨み止めた。
(ありがたい……)
どうやらこの旅行は、空前絶後の休暇のようだ。…不意に今朝泣きついてきた姉の顔が瞼の裏に浮かぶ。
心地よい風が通り抜けて、窓際の椅子で息づいた俺を眠りの世界へ誘った。
(……ハッ……!!!)
俺は気付いてしまった。気付かなければ良かった。今夜は布団だということに……
毎晩、隣の部屋の布団で寝ていたはずの結香が俺の布団へ忍び込んでくるのだから、今夜も絶対に来る!! 駄目だ……何とかしなくては……
そして、悟った。俺に休暇は無いこと。結局、結香は防げないこと。
……むしろ、忙しいこと。
どれだけ悩もうと、時間は刻々と流れていく。一日はたった、86400秒しか無いのだ。
──見た目質素でいながら、非常に美味な夕食を堪能して部屋に戻った俺は、追加料金で五人分になって部屋の大半を埋めた真っ白な布団を目に、肩をすくめた。
やがて始まった定番の枕投げ大会。
木枯先生は投げる気も避ける気も無いのか、枕が後頭部に直撃しても、どこ吹く風な表情で本のページをめくっている。
一方、枕を投げずに枕で殴る戦法の先輩は、二人の怒りの矛先になっている。
時々直撃する流れ弾はキツイけど、三人の戦いは見てるだけで楽しい。
笑顔の美少女たち。激しく動く度に乱れる浴衣。飛び交う罵声と枕。
作者よ……浴衣は反則だろ。
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