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やがて枕投げ大会は、先輩の体力切れで終結した。
三人が肩で息をしている辺り、激しい攻撃を繰り返していたのだろう。
*
俺と結香は窓際で、饅頭を摘まみながら話を始めた。今のこと高校のこと昔のこと……
──どれだけ時が流れただろうか?
青白い月光の下、鹿威しの音に目を覚ました俺は、俺の腕を枕にして寝ている結香に気付いてどけようとした。部屋は電気は点いてなかったが、月明かりが射し込んでいて割と明るかった。
「……結香……」
至近距離で見つめた結香は、青白い月明かりが照らしているせいか、いつもとは違う魅力を感じさせている。
結香の髪は枝毛が一本も無くて、滑らかさは思わず指を通したいほど。
漆黒の髪の中、幼いその表情が青白い月光に照らされる。淡い桜色をしている頬、唇は月光の下で冷たく潤んでいる。
俺の中で何かがプツンと切れた。
結香を抱き寄せると、触れるだけの口付けをする。
結香は目を覚まさない。胸を撫で下ろした俺は、彼女に毛布を掛けると隣で天井を眺めながら目を閉じた。
明日はどうなるのか? 答えの無い疑問を胸に、眠りの世界へ滑り落ちていった。
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