平和部の温泉旅行

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   俺と結香は、遅い夕食を存分に堪能した。  それからは、食休みを兼ねて読書を楽しんでいたのだが、ある程度のページを読み終えた頃、木枯先生は何かを思い出したように手を叩いた。  思わず本を閉じる。咄嗟の反射行動だった為、もちろん栞(しおり)なんか挟んで無い! ちょっと面倒だ!! 「……そうだ。記念撮影とかしないか?」 「え?」  あの木枯先生が存外普通な事を口走ったものだから、拍子抜けしてしまった。 「なるほど♪ それ名案ね」  先輩は木枯先生の意見に食らいついた。……考えてみれば、旅行先で記念撮影をすることは当たり前なのかもしれない。  俺は長い間、由美姉ぇと二人きりで生活していたので、旅行に行った記憶は覚えてないくらい前なのだ。  ─俺は木枯先生が設置したカメラの正面に立つと頬を緩めた。右腕に結香が寄り添う。セルフタイマーを起動した木枯先生は、いそいそと写枠に入るとピースを作った。  シャッターの音が鳴り響く。  * ──太陽が真上の時間。  荷物を片手に振り返る俺。揺れる鈍行電車の中。  目の下の隈がとれない俺は開けた窓から外を眺めていた。風が頬を掠めて、寝癖で跳ねている髪を乱す。ただ無言で流れる空を眺めていた。  平和部に部員が一人増えたんだな……。ため息を吐きながら俺はどうでもいいことを思った。 「きっと由美姉ぇ泣いてるだろうなぁ~『一人は怖いよぉ……』とか言いながら」  一人で呟きながらお土産の饅頭が入った紙包みの紐を握った。  春は夏に移行する準備を始めている。俺は照り付ける太陽に目を細めながら口元を緩めた。  
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