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「……そうか、お前は……」
今までの俺なら、座布団の上で微笑む彼女を否定していただろう。なぜなら彼女は人では無いのだから……
「……おかえり。ホノカ」
「ただいま。御主人様♪」
ホノカは首を30°ほど左に傾けると、鋭く長い犬歯をニッと覗かせた。
*
……雨が降る寒い日のことだった。
傘を右手に水溜まりを飛び越えながら進む俺。由美姉ぇから頼まれたお使いの帰りだった。
急に風が吹き抜けて、俺の手元から傘が吹き飛んだ。それが運命の出逢いだったのかもしれない。
傘が吹き飛んだ先には、段ボール箱の中でうつ向くオッドアイの仔猫がいた。
仔猫は俺を不安そうに見上げると、弱々しくにゃーと鳴いた。
「お前……捨てられたのか?」
すると仔猫は、一瞬迷うように目を泳がせた後、弱々しくにゃーと鳴いた。
まるで言葉が通じてるように仔猫は返事をした。
「そうかそうか……」
災禍は嬉しそうに笑いかけると、屈み込んで手を差しのべた。
「じゃあ……家来るか?」
うつ向いてた仔猫は災禍を見上げると、にゃーんと鳴いた。
家に連れ帰った仔猫を風呂に入れた後、とりあえず牛乳を与えてみたりして、災禍は仔猫に名前を与えた。
ホノカ。……とあるアニメのヒロインの名前だったかもしれない。
仔猫は名前を呼ばれる度に嬉しそうに振り返ってにゃーんと鳴いた。
……それから数ヶ月後のことだった。本当に急な出来事だった。
黒猫のホノカは天草家から姿を消した……
*
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