災禍が御主人様!?

4/21

113人が本棚に入れています
本棚に追加
/260ページ
  「……そうか、お前は……」  今までの俺なら、座布団の上で微笑む彼女を否定していただろう。なぜなら彼女は人では無いのだから…… 「……おかえり。ホノカ」 「ただいま。御主人様♪」  ホノカは首を30°ほど左に傾けると、鋭く長い犬歯をニッと覗かせた。  * ……雨が降る寒い日のことだった。  傘を右手に水溜まりを飛び越えながら進む俺。由美姉ぇから頼まれたお使いの帰りだった。  急に風が吹き抜けて、俺の手元から傘が吹き飛んだ。それが運命の出逢いだったのかもしれない。  傘が吹き飛んだ先には、段ボール箱の中でうつ向くオッドアイの仔猫がいた。  仔猫は俺を不安そうに見上げると、弱々しくにゃーと鳴いた。 「お前……捨てられたのか?」  すると仔猫は、一瞬迷うように目を泳がせた後、弱々しくにゃーと鳴いた。  まるで言葉が通じてるように仔猫は返事をした。 「そうかそうか……」  災禍は嬉しそうに笑いかけると、屈み込んで手を差しのべた。 「じゃあ……家来るか?」  うつ向いてた仔猫は災禍を見上げると、にゃーんと鳴いた。  家に連れ帰った仔猫を風呂に入れた後、とりあえず牛乳を与えてみたりして、災禍は仔猫に名前を与えた。  ホノカ。……とあるアニメのヒロインの名前だったかもしれない。  仔猫は名前を呼ばれる度に嬉しそうに振り返ってにゃーんと鳴いた。 ……それから数ヶ月後のことだった。本当に急な出来事だった。  黒猫のホノカは天草家から姿を消した……  *  
/260ページ

最初のコメントを投稿しよう!

113人が本棚に入れています
本棚に追加